ジャニオタ10年選手に恋人ができた話。

2月の頭に恋人ができた。「理由をつけなくてもいいなら片思い」そう書いていた。ずっと好きだったと言うとあまりにも短い。片思いだったのはせいぜい2ヶ月だったろう。

彼と出会ったのは去年の10月で、その時の印象はほとんどない。所属している団体の同期だけど、私が10月はえび座に通っていたせいでほとんど会議に出られなくて、会うのが最後の同期だったような気がする。顔だちも地味だし、おとなしい人だから、たぶんあの時も挨拶くらいしかしていなかったと思う。

「自分と似てる」と思うまでひと月かかった。私たちのはじめてのイベントを運営するうえでの準備期間。そんなに関わることはなかったけれど、本番当日にふと、あっこの人は私と似ている、と思ったのだった。自分の時間軸の中で生きている感じとか。私と似ていると言うにはあまりにもいい人すぎたけれど。

賢い人が好きだ。それはずっと言っていて、その集団の中で自分がどう振る舞うかの選択をうまくできる人に惹かれる。紫耀くんもそう。自分の求められているポジションを測ることができる。はじめて2人きりで話したのは12月の末だった。2人で頼まれた仕事が早々に終わってしまったから、栄の地下でどら焼きを食べた。そこで話してくれたこれから彼がすべきこととその理由は私が彼に惹かれるきっかけになるのに十分だった。たった3時間で私は彼のことを信頼してしまった。もちろん2ヶ月間の下積みはあったけれど。

その日の日付が変わるまでの間にあったことが私と彼の分岐点だった。私は別の人を振った。好意を受け取れないと選択をした。でもそれが正しかったのか分からなかったから。真っ先に電話をしたのは彼だった。疲れてるはずなのに3時間も電話で話を聞いて、私のよくなかったところを指摘した。そんなことを言ってくる人は今までいなかった。そんなところまで見られてるなんて思いもしなかった。

「他の人が見ていないところまで見ていてくれる」それはとてもずるい。好きになりやすいポイントだと思う。私だけを見ていてくれたんだ、という特別な感覚に浸ることができるから。彼はそういう隙間を無意識に突くのがとても上手い。実際に人のことをよく見ているけれど、それだけではなく。

2人だけで仕事をすることが増えたこともあいまって、私はどんどん彼を好きになった。仕事もしていたけれど、ご飯も何度か行った。それでも、惹かれれば惹かれるほどに「人として好きなだけじゃないか」とか理由をつけてそれから逃げようとした。同じ組織に所属しながら片思いをするなんて不毛なだけだから。情緒不安定なまま1月を過ごした。ちょうどジャニーズワールドの時期で、好きという感情のカテゴライズがぐちゃぐちゃになっていた。紫耀くんを好きな気持ちと五関さんを好きな気持ちと彼を好きな気持ちと、いったい私はどれくらいの好きの種類を持ちながら生きているんだろう。上手く分けることができなかったのだ、あの時は。

2人でオムライスを食べた帰りに私からすごくずるい言葉を発した。「人って関係に名前を付けたがるものじゃない?」そう言うだけ言って、地下鉄に乗って別れた。恋人関係になれないならこんな曖昧な関係はやめたほうがお互いのためだと暗に含ませて、それでも明言は避けて。とてもずるいと思う。私から一言好きだと言ってしまえばそこで、どちらにせよ、終わっていたのに。

2月の頭にまた2人でお茶を飲んで、その別れ際に告白をされた。あんなに私が回りくどい言い方をしたのに、彼はとてもシンプルに告白をしてきた。そこでも私はすぐに応えられなかったのだけど、彼の言葉で結論を出した。それから2ヶ月経って、今に至る。

 

恋は盲目なんて言うけれど、それは本当にそうだと思う。私は今まで紫耀くんと五関さんに片思いしていたんだなぁと思う。本当の恋愛と変わらない。趣味だと言い切っていたけれど、情がある限り趣味で割り切れていないのだ。私は、ふとした瞬間に紫耀くんのことを考えていたし、お金を払って紫耀くんに’会いに行っていた’けれど、それは今全部彼にすり替わっている。ふとした瞬間に彼のことを考えているし、お金を払って彼に会いに行っている。だから相対的に紫耀くんのことを考えることも、お金を払うことも減った。激減した。

これは私が不器用だからなのだけれど、私はどちらかを選ぶことしかできない。どっちも同じだけ同じように好きでいることができないのだ。今現在紫耀くんのファンという立場を満足に続けているかというと、ノーと答えるしかない。前みたいに彼を深く知ろうとか、表現まで理解したいとか、そういうところまでまわせる時間や自分のキャパが足りない。プライベートの部分だけでなく、仕事が忙しくて充実しているというのもあるけれど。それにプラスして紫耀くんは現在決まっている現場が野球大会しかない。クリエもバックの仕事もないのだ。私の熱量が保てないのはそこもある。目に見える機会が少なすぎる。月に2回の少クラや雑誌ではモチベーションを上げられるに至らないのだ。今の私では。

かといって完全にオタクをやめることができないのも私で、この前はSexy Zoneのツアーに行った。これからA.B.C-Zの舞台やコンサートに行く予定もある。それでも恋人ができる前と今とでは圧倒的にモチベーションに差がある。これが今の私の葛藤で、今のところどうするとも言い難い。このままツイッターのアカウントでプライベートまでつぶやくことが良いとは思わないし。どうするべきなのだろう。

10年間ジャニオタしかしていなかったから分からない。迷いながらオタクをやっても楽しくないのだ。もっと趣味のためにファンをやりたい。