やさしいままで

19日間留守にしていた実家に戻ってきた。

ネイルを白から赤に付け替えた。

週に2日しか出社しない会社に行った。

フジファブリック若者のすべてを聴いた。

2021年の夏は、8月18日で一旦終わり。

 

ここ数年の夏はだいたい2~3週間くらい優斗くんを見に東京へ通って、終わる頃にはもう8月も後半で、詰め込んだ予定と暑さとクーラーで体力が削られて決まって扁桃炎になってしまう。熱を持った喉に手をあてて今年も夏が終わるなぁとぼんやりしているうちに2学期がやってきて、夏の思い出は白昼夢になる。

 

2年前の夏を一生忘れられないし、あの夏に囚われてこれからも生きていくと思う。あの夏を超える夏はもうないと断言できるけど、特別だからと言ってあの夏とそれ以外の夏を比較するのは野暮と言うかしたくない。

 

2年(正確には1年半かな)という月日が経てば、感覚は鈍くなっていて、果たして私はステージに立つ優斗くんが伝えたかったことを正確に受け取れたのかと考えると決してイエスと言えるようなものではなく。否が応でも年を取る。年を取るということはどんどんアンテナが錆びて、キャッチできる周波数が減っていくように思う。磨くことを怠った自分が悪いけどね。

 

今年の夏、優斗くんがソロで選んだ曲は『FORM』だった。もう少し自分が若ければ受け取れる情報量も多かったかもしれないけど、何を伝えたくてこの曲を選んだのかあまり感じ取れなくて。

5人で踊るときとは違う、この曲を踊るときだけはさながらコンテンポラリーダンスみたいだと思っていた。もちろん振付はあるけど、『演じる』ことに磨きがかかっているというか、加速しているというか。だからきっと、この曲の主人公を演じていて、伝えたいことがあって踊っているんだろうなぁと思いながら、何を伝えたかったのかなぁというところまで汲み取れなかった自分が不甲斐なくて、ただ白い光に包まれる優斗くんを見ていることしかできなかった。アリーナ上手から見ると白いピンスポットライトに照らされて1人でTDCのセンターに立つ優斗くんが見られてそれはとても好きだった。

 

HiHi Jetsのことを1アイドルグループというよりベンチャー企業みたいに思ってるところがあるから、本当によく練られたセットリストだなぁPDCAサイクル回しまくってるなぁと思っていたし、何度見ても楽しくて見応えのあるコンサートだった。もちろん私はただの1アイドルオタクなのでMCとかコントのような日替わりを楽しみに多ステするという側面もあるけど、何度同じ曲を同じ順番で見ても飽きるところが1つもなかった。体力や集中力を考えて回数を減らしたから、というところも関係あるかな…量より質(自分自身のコンディションと言う意味での質)にシフトしたのが私も大人になったというか、年取ったところだなぁ。でも周りも途中で座り出すとかもなかったから、やっぱり噛み応えあるセットリストだったんじゃないかと思う。

 

私がジュニア担になってからずっと言っている、アイドルは商品で私は消費者という理論、アイドルのほうから聞くと思っていなかったから驚いた。俺たちを使ってあなたの人生を豊かにしてくださいって、18歳で言えるもの?その言葉の裏にはただ消費されるだけのコンテンツにはならないって矜持もあるのかもしれない。

誰かがHiHi Jetsって1つの思念が5つに分裂したみたいだよね、と言っていて、その表現ってすごくしっくりくるなぁと思っていた。5つの個が集まって1つになったというより、元々1つだったのが5つに分裂したって言われたほうがしっくりくる。感覚的な話だけど。だからと言ってじゃあこの人が言ったことは他の人も思ってるのか、と言われるとたぶんそれは違うような気がする。俺たちを使ってあなたの人生を豊かにしてください、というのは猪狩蒼弥の思考だけど、他の4人が必ずしも同じことを思っているわけではないような。これも感覚的な話だな。ただ、5人横並びで各々の考えた言葉を聞いていて、それは否定も肯定もされることはなく、言葉にするとやっぱり『共有』が近い気がする。

 

優斗くんは「僕のことは皆さんが感じてくれるままでいいんですけど」って笑ってはぐらかして、あぁこの人はこうやって優しく突き放してくるんだなぁと思った。私が1年半前にジャニアイを見たときは無防備に心の柔らかいところをさらけ出してて心配になるって書いたんだけど、こうやってピシャっと突き放してくれたほうが、私は安心するし、こんなこと言われたら私が見たいものを見たいように見るけどそれでもいい?言質取ったけど大丈夫?ってなる。いや、なったからツイートしたけど…

私が年を取るということは、優斗くんは大人になるということ。心の守り方をどこかで覚えたのかもしれないし、曖昧にするって残酷な優しさを知ったのかもしれない。もともとそうだった節がなきにしもあらずなのかな。

この4人のためなら死ねる、この4人のためなら何でもできる、隣からそういう言葉が聞こえていても、絶対にそういう言葉は口にしなくて、環境が整ったって言葉に終始していたこと、そういう部分に触れると急にふっと消えてしまうんじゃないかと思ってしまう。時折こういう地に足ついてない部分が垣間見えると、お願いだから少しでも長く板の上に立っていてと思ってしまうね。いつもはやりたいこと全部やってしたいこと全部叶えて好きなようにアイドルしてって言うのに。

 

『FORM』を見ても伝えたいことが感じ取れなかったって書いたけど、私の中で『FORM』と挨拶は地続きで、言葉にしない優しさと残酷さがどちらにもあったなと思う。見たいように見ていいよってことだから(曲解と言われればそれまでだけど)私に見えていたのはそういう姿だったな、ということ。

言葉はちっぽけだから、塞いで何も言わなくていい

この鼓動が全てだから

 

 

最後に1つだけ。今回、どうしても仕事の都合で初日に入ることができなくて、優斗くんの口から直接『デビュー』という単語を聞くことはありませんでした。この言葉を聞くのが本当に怖くて、オーラスでもしかしたらもう一度言うかも…と思ってドキドキしていたので、一度も聞かなかったことに正直ほっとしています。

自担のデビューを体験したことがある身として、デビューが絶対的な正解でもゴールでもないと思っていて、それは私が個人的に思うだけで大手を振って言うべきでないんだけど、デビューして得られるものがあるように、デビューして失うものも同じくらいある。だから、デビューなんてしなくていいよ、と思う自分がいることも事実で。

ただ、ジャニーズジュニアである以上、当座の目標は『デビュー』であることは間違いなく、本人たちがそこを目指すと言うのであれば、最速で掴むと言うのであれば、目標に向かっていく追い風を送れるようにするのが"正しい"ファンの在り方だと思うので、できることはできるだけやっていくつもりです。

これから先もその言葉を聞くたびに絶対に自分の心は斬りつけられるし、それを望まない自分がいる現実に胸が痛むと思うんだけど、騙し騙しでも、蓋をしても、見て見ぬふりをしても、"正しい"姿でいたいと思う。私は私に正しくあることを課しているので(別にこれはオタク関係なくどんな物事に対してもそうです)

 

そんなこと許されないよなぁと思いながら、罪悪感を持っていく。

大袈裟だよなんて笑われてしまうだろうな。